少子化問題のトリセツ
なんだろうここ最近かな。
自民党の衆議院選挙の前後くらいからやけに『これからの日本大丈夫か?』『日本の社会の行く末はどうなる?』的な社会派なテーマ取り上げるブロガーの記事なんだか多いっすよね?
中でもやけに目につくのが【アベノミクスによる経済効果の波及】に並んで【少子高齢化問題】のトピック。
自分もこの問題が中長期的に経済にも社会福祉にも政治にも一番波及効果を及ぼす問題と捉えて自分で趣味で調べてみました。
実際、BLOGOSとか知識人層(?)の人らが書くブログとか論評って分かりづらいでしょ。
身の回りの体験から情緒的、強引に結論を帰結するだけのクソみたいな偏重されたものも多いのでそれだけ見てちゃ読者も本質的な問題の理解には至らないだろう、よく分からないでしょ?と考えまして
今回自分なりに年末年始文献を読んだり、生データを掻き集めたりして理解した情報を自分なりに思考整理の一環でアウトプットしてみようと思い。
そこらの見識者や学者さんのブロガーよりよく本質を理解している自負はございますので是非読んでみていたけたら、と。はい。
■まず現状の問題整理
国立社会保障・人口問題研究所の予測によると(よく引用されるデータね)2060年(あと45年後)には日本の総人口が8,670万人まで減少し、出生率は1.35(※)から回復しないとされ ている。(※ 男女から生まれる子供の平均数。ちなみに人口を維持するには″2"必要です)
これがいかに由々しき事態かは散々いろんなところで語り尽くされているから省略。
因みに、少子化は日本だけの問題じゃなく日本に遅れて経済が急成長した韓国、香港、台湾、シンガポールでも起こっており2003年には香港が0.94、台湾が1.24、シンガポールは1.25、韓国は1.18と日本の1.43よりかなり深刻な状況に陥っています。
日本での高齢化は仕方ないとして問題となるのは<出生率の低さ>になりますが、この【合計特殊出生率】って考え方は既婚者間での子供の数だけではなく母数の対象には既婚者だけではなくて未婚者も含んで設定されています。
なので、【未婚者の問題】と【既婚者の問題】それぞれ分けて問題を考えなくてはよくあるアホな知識人ブロガーの主張、または政治家による政策のように本質見誤って素っ頓狂な結論に至ってしまう危険性がございます。
厚生労働省の人口統計を調べてみると、既婚者の子供の出生率である<完結出生率>は確かに戦後と比べると減ってはいるものの実はそんなに減ってないんですよ。
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1952年に3.5
1962年に2.83
1972年に2.2
1982年に2.23
1992年に2.21
2002年に2.23
2010年に1.96
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ほらね。2010年にやっと2は切ったものの1972年あたりから最近まで変わってないんですよ。この大幅な日本の合計特殊出生率の低下の根本的な原因は<未婚者>に求められるのが妥当なんですね。つまり未婚率の急上昇が直接的な原因な訳です。
そして世の中の未婚率がどうなっているかというと、
[男性の場合]
1980年の未婚率2.6% ⇒2010年の未婚率20.14% <20年でおよそ7.7倍!>
[女性の場合]
1980年の未婚率4.45% ⇒2010年の未婚率10.61% <20年でおよそ2.4倍!>
日本の場合、未婚者が増えれば出生数も比例して下がるって相関関係が確実に存在するんだけども世界の先進国の場合この方程式が実は成り立つのは実は少数派なんですね。
世界各国の婚外子割合を示すデータを調べてみると日本は結婚外による出生数は2%前後しかなくてフランス、スウェーデンでは婚外子の割合は50%を超えているんですよ。米国も40%を超えてる。
そして婚外子が多い国は総じて出生率も比較的高いんですね。そしてこれらの国、1980年と2008年で比較すると婚外子が2倍から4倍以上に増えているんですよ。
「これってなんで生じたの?」って疑問が沸いてきたんですけど調べてみると実は、
1945年頃まで米国は日本と比べても婚外子の割合に大きな差はなかったんですね。戦後に日本の婚外子比率が下がるのに対して米国では年々大きく上昇しているんですわ。
つまり婚外子の考え方自体の差が生じているんだがそれは昔からの日欧米文化の違いじゃなくて、戦後に生じた日本と欧米の結婚、出産に対する考え方や環境の変化であったり婚外子に対する各国政府の政策など社会的環境の変化によるわけです。
だから日本でも婚外子に対する考え方や社会制度が変化すれば婚外子の増加現象が起こることも否定できないですよね。
てか、
なんでこんなに結婚をしたくない男女が世の中に増えたんでしょうね?
こういうのも身の回りの体験や実例から安易に帰結すると間違った結論を導くのでちゃんとデータを調べてみました。
国立社会保障人口問題研究所のデータを見ると【いずれ結婚するつもり】という男女って実は85%~90%前後もいて長年ほぼ一定に推移しているんですね。
結婚をしたくない男女が急に増えた訳では決してないんですよ。
つまりだ、未婚率が急上昇した1985年以降に《結婚したくとも結婚できない状況》が大多数の男女に生じているとみて間違いないのですよ。
んで調べてみるとほらやっぱりご察しの通り、結局《経済的な問題》な訳です。
2011年の調査によると女性が<結婚相手に望む条件>として挙げたものは
1位【人柄 88%】
2位【経済力 42%】
3位【職業 32%】
でこれって実は20年以上も前からほとんど変化していないんですけど。
この職業ってのは今でいう《正社員か非正規雇用かアルバイトか》みたいなところになります。つまり女性の74%は男性の最低限の経済力を保有しているかで結婚に至るか否かを判断している訳です。
因みに、男性が女性に求める条件の栄えある第一位は【人柄 74%】二位が【容姿 23%】で大~~~きく離れて3位が【職業 5%】ってなってます。
つまり男性が結婚できるか否かは<経済環境>に大きく影響され、経済力や安定した職業が得られない男性は結婚したくても女性の求める結婚条件が整わず結婚できないんですね。
んで、世の中の結婚適齢期の25歳~34歳の男性がどんだけ不景気の煽り喰らっているかというと
★完全失業率: 1991年<約2%> ⇒ 2009年<約6.4%>と3倍強!
★非正規雇用割合:10.9% ⇒ 20.5%と2倍強!
その結果・・・
世の殿方の30~34歳の配偶者がいる割合は正社員であれば6割弱であるのに対し、パート、派遣などの非正規雇用の人では25%以下しか配偶者いないんですよ?
言い換えると非正規雇用者の殿方は34歳になっても75%が結婚できていないんです。
当人からすれば自分の経済環境を鑑みるに最初から結婚を諦めている若年者も多いだろうし今後も状況は依然厳しいでしょう・・。
女性から見ると条件に見合わない男性を度外視するなら需給の関係でそりゃ年頃の女性も婚活は熾烈を極めますよね。
それだけじゃなく女性の未婚率が1995年の5%から現在の10%に増えた原因の一つは高学歴化が進み、収入的にも自立した女性が増えたとも考えられます。
なぜなら2013年の内閣府の調査によれば、未婚晩婚化が増えている理由の第一位(55%)は『独身の自由さや気楽さを失いたくないから』となっており、それが実践できるようになったからでしょうが、一方で男性側は『経済的に余裕がないから』と依然厳しい状況にある訳です。
また、未婚率とは別に夫婦間における<完結出生数>の低下も未婚率の急上昇と比べるとインパクトは限定的ではあるものの確かに存在します。
[完結出生数]
1962年:2.8
1972年:2.2
1982年:2.23
1992年:2.21
2002年:2.23
2012年:1.96
2005年から低下し始め長年《2》以上を保ってきていたが2010年にはとうとう1.96と2を下回りました。
また確かに、人口問題研究所の2011年のデータから夫婦間の【理想子供数】が2000年以降減り続けている。
2002年:2.56
2005年:2.48
2010年:2.42
微小の差異に見えるものの実際の子供の実数に繋がっておりそして今後も減り続けるでしょう。
国際的調査ではスウェーデン、フランス、米国が80%前後の夫婦が《子供をもっと増やしたい》と思っている一方で日本と韓国では50%前後のカップルが「もう子供を増やしたくない」と思っているんですね。
日本でのその理由はなんと第一位「子育てや教育にお金がかかりすぎるから(56.3%)」
第二位に「高年齢で生むのは嫌だから」らしいんです。
日本だけじゃなくて韓国なんてもっと過激な学歴社会で子供にかかる学費が桁違いなのはもはや周知の通りですよね。
じゃあこれら掘り下げてみると
経済的理由には「収入が少なくなった(収入要因)」と「学費、養育費の高騰(支出要因)」があるわけですが、
収入要因は先ほど述べたように夫婦間においても同じように不景気が影響しているって感じですがもっと大きい原因は支出要因で【養育費、学費の高騰】になります。
原因は結論から言うと昭和50年あたりから大学、短大、専門学校に進学する割合が年々増え続けて現在では大学進学率が50%超えてるからですね。
進学率の上昇に比例して1人当たりの教育費も当然増えてて平成19年の文部省の調査じゃすべて公立学校を利用したとしても大学まで1,000万円超える教育費が必要なんですね。
因みに、私立で理系大学に進む場合は一人当たり2,500万円になるわけです。んで実際、3人の子供を大学までやるとなると塾代習い事代含め4000万円~1億円かかる訳ですわ。
無理っしょ。無理ですわ。「貧乏子だくさん」じゃなくて「子だくさん故の貧乏」なんです。
ちゃんと将来計算できる大人の夫婦であれば子供は1~2人で十分ってそりゃ思うよね、当たり前だ。んで、『教育費の高さ』と『地方別の出生率』って相関関係が明らかで、神奈川(1.22)とか東京都(1.02)とか大阪(1.28)とか明らかに出生率低いんですね。
因みに地方はやっぱ出生率高くて、一番高いのは沖縄で1.8ですね。
で分かるのは、仮に都心部の学費を下げて鹿児島とか岩手並(東京の半分以下)にしても
それだけじゃどう考えても出生率2まで持っていくのは難しいのは明らかになった訳です。
でもね、経済状況だけじゃなくて経済関係なく出生率を押し下げている現象があってそれがいわゆる『晩婚化、晩産化』です。
厚生労働省のデータによれば女性の″平均初婚年齢″が1980年に25.2歳から2011年には29歳とこの短期間で4歳上昇してるんですね。
第一子の出産年齢は26.4歳から30.1歳と調べてみると想像してた以上に晩産化してるんですわ。これじゃ3人目とかなかなか考えられないでしょ、当たり前だ。
晩婚化の原因は何かって、そりゃご察しの通り大学進学率の影響なんですね。
1960年には大学進学率3%から1990年には15%に、2009年には44%まで、つまり20年弱で3倍近くまで上がっております。
短大進学率含めると現在は55%ね。
あと、よく『出産を迎える女性でもちゃんと社会復帰できる仕組みが必要だ』って議論がされてるんだけどもそれもまさにその通りで、第一子を生む年齢と重なる25歳~35際の年齢の時期にだけ日本の女性の就業率って大幅に落ち込んでるんすね。
出産後に退職する割合(全女性の32.5%)が超~大きいんですわ。
それって実は国際的に見ると、欧米、アジアの統計で比較しても日本と韓国だけなんすね。これ後述するけど日本の文化ってか企業が悪いんですよ。
出産を迎えた女性の退職理由の39%が『家事育児に専念するため』自発的に退社してて『仕事と両立が困難』が26.1%で『解雇された等』が9%なんですね。
約35%が条件さえ合えばすぐにでも再就職を希望していると考えていい。これは制度上の問題で、制度整備さえすればある程度解決できるものとみていいと思います。
何度も言うけどこういう傾向が見て取れるのは実は調べてみると日本と韓国だけ。
この2か国だけ特異だから。
統計上、『男女の収入差』、『子供有り無しの女性』でここまで収入格差があるのは国際的に日本と韓国だけ。出産する女性に不利益を押し付けるのはこれらの国だけ。
因みに、『日本は男尊女卑の価値観だったのはもはやジジイの世代で今の日本では女性も有能であればしっかり登用して活躍させる文化になっています』なんてのはまだまだ極一部で大嘘に等しい。
それは統計がしっかり表してて、世界での各国の女性の管理職比率について各論あるけどフランスや米国が40%近いのに対し日本は11%でいまだに家長制度が根付く男尊女卑文化の韓国の8%弱に次いでワースト2位となっております。
「やる気あります!」「男性に負けないくらい有能です!」なんていっても管理職になれない環境の女性がゴロゴロいるわけですね。
その理由が「現時点で必要な知識や経験、判断力を有する女性がいない」とする企業が54.2%で、「将来管理職につくかもあれないが管理職に就くための在職年数を満たしてない」とする企業が22.2%、「勤続年数が短く管理職になるまでに退職する」が19.6%なんだとか。
んな訳ないだろ!
若い産業や業界はそこまで酷い状態じゃないとして、まだまだ多数派の産業のお偉いさんの考えはそうらしいので《女性の社会進出》ってのも実は現状まだ全~然進んでないってことがわかりました。。
退職理由に『仕事との両立が困難』と考える女性の理由の内訳は、「勤務時間が合いそうもなかった(65.4%)」「職場に両立を支援する雰囲気がなかった(49.5%)」「身体が持たなそうだった(45.7%)」「育児休暇をとれそうもなかった(25%)」となっております。
もうここは政府が政治介入して働く女性の当然の権利として育児休暇制度の利用しやすい環境やフレキシブルタイムの導入なりを整備する必要がありますわな。
そして育児が終わって社会復帰しても多くの女性はパートタイマーや非正規雇用として復帰するのが統計上明らかで
子を産む女性は出産後の養育期間中にキャリアを積む機会、管理職への道を閉ざされ、収入面だけとっても子供を産まない女性と比較して生涯年収的に大きな差が出ているようで。(男性の61%減、子供なし女性の24%減)
よくトピックに上がる『専業主婦議論』だが1980年ごろであれば共働き夫婦より専業主婦が2倍も割合多かったんですが、1990年~2000年頃には逆転して共働きの割合が断然増えてるんですね。そりゃ不景気で収入減ってますし。
一層、出産後の女性に対して働きやすい環境や子育てしやすい環境の法整備が大事ってことですね。。
そもそもね、成熟社会においては少子化ってのは不可逆的な当然の流れで昔の子供の役割って「親の仕事の手伝い」「家業を継ぐ」「親の老後は子供がみる」って風になってて子供は『生産財』であったのに対し、現在じゃまったく違うでしょ。
子供の経済的な価値が変わって「生産財」から「消費財」になったということ。
昔の人「子供が必要だった、できるだけ多い方が助かるし、お金もそんなにかからないし」
今の人「子供の価値はかわいいだけ、いたって何か助けになる訳じゃないし、お金も手間も莫大にかかるぞ、それじゃあ余裕もないことだし一人だけいればいいか。あとは自分らの人生を自由に楽しみたい!」
そりゃそうだ。。
纏めると
日本で起こっている急激な出生率の低下問題の正体とは
①【産業構造の変化による子供の経済的価値の低下の大きな流れ】
②【近年の不況による低所得者の増加による未婚率の増加】
③【高学歴化による初婚年齢の高齢化】
④【養育費/教育費の高騰】
⑤【女性の出産後の再就職条件の悪化】
これら障害が複雑に絡み合って引き起こされていると結論していいと考えてる。
先ほども述べたように世の中的に少子化は避けられず日本の社会保障の構造は完全に崩壊する未来はおそらく不可避に来るだろうが、一つづの問題について何か解決の目途は見いだせないものか考えてみたいと思う。
特に深刻な問題と考えているのが未婚率を押し上げている【経済環境の悪化】なんですけど、前提として不景気に伴う失業率の上昇が原因となる出生率の低下は一時的な現象として、おそらくもっと深刻な問題なのはおそらく職業的に不安定な【非正規雇用の増加】だと思うんですね。
この不景気の経済環境下で経済界は政府に対して更に非正規雇用の緩和策を求めていることから今後ますます非正規雇用者の増加は予測される。
低賃金が前提の非正規雇用じゃなくて欧州で一般的な《同一作業同一賃金》が前提とならないとダメでしょ。
でないと一向に未婚率の上昇は解消されないものと考えていい。政府は少子化対策の一環で極力、非正規雇用者を減らす政策をとらねばいけないと思います。
あと【高学歴化による晩婚化と教育費用の増加問題】ね。
日本でも更に進学率が上がることはもはや周知の通りで益々、晩婚化、教育費の高騰は進んでいくものと思われます。
親の世代じゃ国公立の大学も月額学費が1000円で入学金も一万円程度だったらしいのが現在じゃ私立大学と学費が変わらなくなり、しかも今後ますます進学率が上がるのだから明らかに学費負担など公的な学費軽減政策が必要なのは目に見えてる。
だけどね、調べてみるとやはり先進国比較でも日本のこういった部分の公的負担はダントツ低いワケ。日本の人材育成はほぼ完全に個人の負担になっているの。
んで年々、学生の奨学金負担って大きくなっててこれも《学生の個人的な借金》で国からの負担って無償給与でなくて利子の一部を肩代わりしているに過ぎないのよ。
だから借りる学生の数と借金は年々膨大化してて学生134万人が1兆1236億円の借金してるのよ。
そしてこれから社会人になる学生はこの借金と地方自治体の借金、国の借金、医療保険、介護保険をこれから背負ってかなくてはいけないんですよ?
どうよ狂ってるでしょこの国?
政治家は日本国の未来(これからの子供たち)に見向きもしないで有権者であって投票率の高い高齢者ばかりに媚びへつらい彼らに向けた社会保障手厚くして若い世代に負担ばっか押し付ける政策を実施してきた結果がコレですよ。
若者は若者で理不尽に貧乏くじばっか引かされていること知りもしないだろうし、興味すらないでしょう。だから若者も選挙行かないけんのですな!
「政局に興味ない、自民党にも民主党にも興味ない」とかじゃなくて投票率が低いのが問題で、投票率が低いから相手にされないんですわ。政治家に見向きもされないんですわ、若い層は。完全無視ですね。
そりゃ自分に表入れてくれる可能性のある老い先短い地方のおばあちゃん、おじいちゃんに媚びた政策しますわ、当然。
だからどこでもいいから投票しましょ!選挙行きましょ!ってことなんだね。
こんな日本で、これから苦労する子供を増やそうと思うだろうか?
子供を持つ親もこれから生まれる子供もデメリットばかりでこのままじゃこれからも出生率が上がることはないでしょう。
長くなったので一旦このへんで!!
次回の更新では本格的に少子化原因となっているものをどう解決していくか生産的な議論をしてみたいとおもう。それでは~